キーくんは今日もかわいいですか?

イ・ランとライブと神様ごっこ

今年の3月23日、イ・ランのライブへ行った。

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私がイ・ランを知ったのは、自身が受賞してもらったトロフィーをその場で売ったたことが話題になっていた時だ。

www.huffingtonpost.jp

実際はパフォーマンスらしいが、その後『イ・ラン インタビュー』と日本語で検索をかけいくつかの記事を読んだ。

Interview with Lee Lang. イ・ランの、型破りな音楽の作り方。 | feature | HOUYHNHNM(フイナム)

フォト&インタビュー | イ・ラン 「このピアスは乳首」「私はドラァグクイーンの時はイザベル」「あなたも香水つけてデモに行く?」 - FNMNL (フェノメナル)

Who Are You?:イ・ランさん シンガー・ソングライター | VICE JAPAN

Sweet Dreams Press: イ・ランのインタビュー(その1)

【REAL Asian Music Report】第10回 イ・ラン × 柴田聡子―出会いから死生観まで、〈友達だけどラヴな感じ〉の日韓シンガー・ソングライター対談 | Mikiki

 どれも超おもしろい記事だった。なんとなく彼女の人となりを知ったような気になって、俄然興味が湧いた。そこからは韓国語のサイトは未チェックであったが『イ・ラン』という日本語を見かけたら必ず目を通していた。そしてこの記事を読むことになった。

news.yahoo.co.jp

映画『パッチギ』が好きだったので、『イムジン河』は聞き馴染みがあった。そして記事は、“3月には来日ライブが予定されているという。”で締められていた。ライブするんだ?!と、辛うじてここでもうすぐライブがあるということを知れた。(全然チェック出来てなかった!笑)一次の東京は既に売り切れていた。二次予約が2月にありもちろん挑戦したものの買えず、どうしたものかと思いあぐねていたところ、譲渡ツイートによってどうにかこうにかライブ3日前にチケットを得ることが出来た。

私は最初にイ・ランの顔とインタビューを読んでいた。その後にYouTubeで歌を聴いたので、初めはギャップを感じ、するっとこの声がイ・ランであると繋げることができなかった。「きっとこうに違いない」という確固たるイメージがあった訳ではなかったのだが、勝手に声は低いんじゃないかな〜とか決めつけが入っていたのだと思う。

 

 ライブの当日、定時終わりにダッシュで向かったが20分遅れて入ることになった。会場に着いた時、彼女は『家族を探して』を歌っていた。私の頭の中で接続が難しかったはずの彼女とイメージと声は、一瞬ですっと結びついた。透き通るような彼女の声は、彼女の存在そのままを表しているようだった。逆に何故微妙な先入観を持っていたのか思い出せなくなるくらいだった。

彼女は1つ1つ話をしてくれた。「この曲はこういうことがあった時に作って、こういうことがあって、『神様ごっこ』に収録した。」「するつもりはなかったが入れることになった。」「収録するつもりだったのに向こうがメールで送ったデータを見落としたことで入れることが出来なかった曲だった。」など。説明や補足をされているというより、“話してくれた”という表現が最も相応しい気がする。また、全席指定のホールだったので客側が体を揺らすとかリズムにのったりすることが難しいムードだったのだが、それを、レスポンスがないから何かどうしたらいいのかわからないとも言っていた。自分の感じたことを思ったまま口に出してくれる人は、安心する。

 彼女についての記事を読んで思っていたことは、当たり前に、思考は国や文化で区切れないということだ。彼女の言うことに「私もそう思う。」とことごとく共感できるのだ。もちろん生まれ育った環境は大いに性格・考え方に起因する。しかしそれだけではない。国も年齢も性格も性別も時代さえ違っていても「私も同じこと考えてた!」となることはたくさんある。今でも孔子が読まれ、ニーチェについての本は毎年新しく出版されているのだから思えば当然かもしれない。その当然を強く感じさせてくれる存在なのだ。

超然的自然体と感じた。嫌なことは嫌、好きは好き。難しいことではないかもしれない。でも人はそれが出来ないのである。彼女はすごい。本当にナチュラルな人だった。多くの人が彼女に惹かれていくのが、生の彼女を見てとてもよくわかった。なんかちょっと漫画『銀魂』のヒロイン(?)神楽のようだな〜と思った。正直なところが。(神楽がわからない人はこの動画を観て)

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※漫画『銀魂』に出てくる神楽

 そしてもうひとつ印象に残ったのは、愛情深い人でもあるということ。主催のSweet Dream Pressの代表の方から、奥様の具合が芳しくなく今回で自分がライブを取り仕切るのは最後かもしれない ということを開演前に聞いたらしく、歌っている最中に思わず涙が流れて来てしまうような時があった。その後の曲間で理由を話しながら、「なんで始まる前に言うの 私が泣くのわかってるでしょ」と日本語で、涙を拭きながら言っていた。曲のモデルにもなっている東京の友達にも、来てる?と呼びかけ、いたらその場で話していたし、裏で日本語字幕の映像を流す作業をしていたのが彼氏だったようで、彼氏が「私より緊張してる。汗がすごい」状態なことも紹介してくれた。笑 それらも内輪な雰囲気ではなく、とても心地がよかった。

 

 ライブは、日本語詞が横のモニターで流れていたので、直で意味を理解しながら曲を聴けるのも贅沢だった。韓国語の曲というのもあるが、私が個人的に音からの理解が遅いので字で見せてくれるとより理解が深まってうれしかった。好きなアーティスト全員この方式導入してほしい。

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 演奏や曲についての感想がなくてすみません。音楽的素養が全くない為、「かっこよかった」としか言えない。

 

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 帰りに満足感のあまり、迷わず『神様ごっこ』を買って帰った。このアルバムは、約70ページのエッセイとアルバムがセットになっている。以下、エッセイで好きだったところ。

みんなどうやって自分の面倒を見て生きているのだろう。

「This is what I was wearing when I said goodbye to someone who I never wanted to say goodbye.」

私のように、自分だけの世界で得意になっている人間は、時々、世の中には知らないことがあることを確認し、そこに喜びを感じるものだ。

私は笑うことで、ちょっとだけ死を忘れることができる。だからユーモア感覚が錆びないよう、常に新しいユーモアを準備している。誰よりもおかしく、誰よりも面白いことが言えるよう、私はいつも緊張している。

ただ力を持ったお金たちが、望遠洞で暮らして自転車に乗りながら時々変なことを考えるイ・ランという存在に気づき、吸い取れるものがあると認識したということだけは分かった。

感じるものがあったら、ぜひ読んでみてほしい。読んでじゃないか、聴いてみてほしい。私はとても良い“イ・ラン体験”が出来た。これからも彼女は見逃せないし応援する。

そして私も、私をちゃんと生きようと思えた。ありがとう

Sweet Dreams Press: イ・ラン - 神様ごっこ(増補新装版)

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